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甚大な喪失
音楽についても映画についても、最も好きなこの一本この一作と
いうものを挙げることは僕の場合は出来ないのであって、実に種
々の、そして数多の作品それぞれに対して常に別個な愛情を抱
いている。ある時はこれに、そしてまたある時はあれにと、その時
々の感情や状況に応じて、偏愛の重心はそぞろに移動していくの
である。

昨今音楽誌の如きものを定期購読する習慣がめっきりなくなって
しまったので、新譜や解散といったニュース、或いはもっと悪い場
合訃報などを大分時が経過してから不意に知るということが少な
くない。先ごろ、英語版のウィキペディアで出くわした思わぬ記述
に愕然としてしまった。

僕はいつ何時でもブロードキャストの音楽を愛好している。つまり
このバンドは僕の嗜好のあり方からすると数少ない例外なのであ
る。彼(女)らの志向がどれほどラディカルな方角へ舵を切ろうとも、
きっと違和感を抱くことなどなく、変わらずそうした変化変容も自分
の好みのものであり続けるのだという不思議な予感を持ってきた。

しかしどうやらブロードキャストの航海は唐突に終りを告げていた
ようなのだ。船乗りたちが一人また一人と下船しているのは知って
いたが、それでもあの船頭がいる限りにおいて、間隔がまばらにな
ろうとも必ず今後も幾たびか出帆はするであろうと考えていたのだ
が。

解散であるならばまだ希望はある。しかしまさか、ブロードキャスト
の精神たるボーカルのトリッシュ・キーナンが亡くなっていようとは。
享年42歳。肺炎のため不帰の客となったそうな。彼女の御魂が
天つ国でとこしえに安らかでありますように。

"Papercuts"Broadcast(Warp Records)




# by bardes-k | 2012-03-24 00:08 | 音楽(PVあり) | Trackback
機種へン
周波数帯の切り替えのため、今年の七月であなたの携帯電話
が使えなくなります、というお知らせはそれこそ結構前から届い
ていたのですが面倒くささが勝って、直前になったらでいいかな
と放置しておりました。

しかし先ごろもらった通知に、キャッシュバックうんぬんという表
記があり、しかもその対象がiphoneということで、迅速に機種
変更を行うことにしたのであります。

デザイン的にはこれまで使っていたものに結構似ていてあまり
新鮮味はなかったのですが、ちょうどipodも壊れてしまったの
で渡りに船といったところ。

でもこれ、シャッフルで聞くとものすごく選曲が偏るんですね。
大した問題ではありませぬが…


# by bardes-k | 2012-03-03 23:59 | Trackback
夜の散策
最後の映画鑑賞が去年夏の「ツリー・オブ・ライフ」でしたので、
永らくご無沙汰でありました。昨日、そうだ今夜こそ行こう、と思
い立って隣街のシネコンまで夜のサイクリングをして来ました。
これが一番素早くスマートに行ける手段なのです。

二十時半開演だったので、少し早く着いた僕は、映画館の階下
にあるカフェでお茶を一杯と思ったのですが、日曜の夜は混み
具合が只事でなく、少し並んではみたものの結局断念しました。

映画は「ドラゴン・タトゥーの女」でした。カタルシスはありますが、
凄惨な描写の一つ一つはかなりえげつないので未見の方で、
特にそうしたご嗜好がないのであれば、(お節介にもほどがあり
ますが)ご用心あれ。

フィンチャー監督の前作に引き続き、音楽はT・レズナーが担当
していて、アルバム『ゴースト』などにとても近しい、静謐な中に
不穏当なものが混ざるのを認めつつも聴き手としてはついそこ
に漫然と身を委ねてしまうという、音世界が荒涼たる氷雪と相ま
って目くるめく効果を上げていました。

帰りは23時半くらい。雪が降りそうな厳しい寒さの中、オレンジ
の外灯に照らされたアスファルトの上を滑るように、道中人にも
全く会うことなく、橋を越えて東京へと戻りました。


# by bardes-k | 2012-02-28 00:39 | 映画 | Trackback
塩の像
数ヵ国で刊行されている「バベルの図書館」シリーズ、日本
版の版元は国書刊行会である。その名が示すとおり、ホル
ヘ・ルイス・ボルヘス自らが編集に当たった「文学全集」だ。
と言っても、百科全書的なコレクションというわけではなく、
これは「幻想文学」の選集であって、まさにボルヘスの愛す
る古今の文士を、その彼らが物した珠玉の短編によって紹
介するものである。

多士済々の顔ぶれであり、たとえ既読のものが含まれてい
るにせよ、誰から手を付けたものか大いに悩むところだが、
もしまだこの選集をお読みになったことがないのであれば、
先ずは、誠に勝手ながら、シリーズ18番目のレオポルド・
ルゴーネス『塩の像』をおすすめしたい。

ボルヘスの作品集『創造者』の冒頭における「心のこもった」
献辞にも明らかな通り、彼が偉大な先達ルゴーネスに向け
る畏敬の眼差しは取り分けて神妙である。『塩の像』の序文
においてもそれは顕著で、ボルヘスは「彼の作品」にこそ、
アルゼンチン文学の「昨日」も「今日」も、そして「明日」まで
もがあると述べている。

どれ一つとして十全でないものはないというような、精緻精
妙な短編集である。作家を志す若者がこれを一読した時、
大いに気概が挫けるかも知れないほどに。

聖書(もっと具体的に言えば創世記のソドムとゴモラ)に拠
り所を持つ二編、表題たる「塩の像」と「火の雨」に戦慄を覚
えずにはいられない。読者はここでまさに文字通り、塩の像
を眺め、火の雨が降るのを目の当たりにするであろう。


# by bardes-k | 2012-02-07 22:46 | 本(和書) | Trackback
初風邪
去年の夏場から、扁桃腺の腫れることが半ば癖のようになって
いて、ほぼ毎月一度は高熱を出して寝込んでおりましたことは
こちらでも何度か書いてきたのですが、11月頃から持ち直し、
以来熱を出すことなく無事年を越して安穏としておりました。

が、今週遂にというか、またというか、再び扁桃腺が腫れ始めて
熱がグングンと上昇する羽目に。しかしながら、そうそう休んでば
かりはいられぬと、今回は八度まで上がりましたが、無理を押し
て出勤することにしたのです。

勤務中は気を張っているせいで、どうにかこうにかやり過ごすこ
とが出来たのですが、帰宅するとどっと疲れが出る。しかし、今
回は気力が続いたためか、二日ほどで快調へと転じてきました。
はあ…実にしんどい一週間でしたが、今はほぼ全快に近い状態
であります。


# by bardes-k | 2012-01-24 00:38 | Trackback
新年
明けましておめでとうございます。
今年も一年細々とながらも当ブログは続けて参ります。訪問してくだ
さる皆様には厚く御礼申し上げます。2012年が誰にとってもより良い
一年でありますように。


# by bardes-k | 2012-01-04 23:06 | Trackback
年越し
昨年春より、別所にてもブログを始めているのですが、次第次第に
ウェートがそちらに映ってしまい(双方合わせると、一月20本の投稿
を一応はキープしております…)、今年はすっかりこちらがおざなり
になっており大変恐縮です。

かような状態ではありますが、なにとぞ来年もご愛顧のほどをよろし
くお願い致します。皆様、良いお年をお迎え下さいませ。


# by bardes-k | 2011-12-30 23:39 | Trackback
バーゲン
円高のゆえでしょうか。最近アマゾンで何気なくCDを閲覧していると
かなりの安値に思わず食指が動きます。特に名盤として広く流布して
いるであろうものは1000円以下で手に入ることが多いかも知れませ
ん。

ソフトマシーンの「Third」がボーナスとしてライブ盤付きの二枚組で
800円台で販売されていたので思わず買ってしまいました。音質も良
くこれはよい買い物でありました。


# by bardes-k | 2011-12-10 23:24 | Trackback
Low"Just Like Christmas"
既に12年ほども前にひっそりとリリースされていたミニアルバム
ではあるが、それは彼らがその後得た声望にも等しくじわじわと
多くの人々の心に響いたようである。

ロウの作品であるからというだけでなく、何よりこのボルドー色の
夜空の下に描かれた雪原の光景に惹かれて僕がこれを手に入れ
たことは何年か前に述べた。その静謐ではかない夢幻の世界は
こうして、耳からだけでなく我々の目を通しても心の内に入ってくる。

"Christmas"に収録


# by bardes-k | 2011-11-30 23:38 | 音楽・アメリカ | Trackback
11月
今年の夏も本当に酷暑に耐えかねる日々でしたが、九月下旬から
かなりスムーズに秋へと移行したような印象があります。勿論かな
り気温の高い日もありました。しかし、そうした日も爽やかで、日の
差さない場所ではひんやりとしていた印象。

今月11月も、恐らくかつての11月のイメージからするとかなり暖
かなのでしょうが、それでもこのところは肌寒くなってきましたね。
気付けばもう今年もあと二月。粛々と日々を送っていきたいもので
す…


# by bardes-k | 2011-11-16 00:56 | Trackback
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